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2011年 10月 07日
荒バロオフの晩ご飯で中華料理屋に行ったときに見かけた詩が良い感じだったので後で調べてみたところ、「春眠暁を覚えず」で知られている孟浩然の詩でした。 夏日南亭にて辛大を懐かしむ 山光忽西落(山光 たちまち西に落ち) 池月漸東上(池月 ようやく東に上る) 散髪乗夕涼(髪を散じて 夕涼に乗せ) 開軒臥閑敞(軒を開いて 閑敞に臥す) 荷風送香気(荷風 香気を送り) 竹露滴清響(竹露 清響を滴らす) 欲取鳴琴彈(鳴琴を弾ぜんとして 取らんと欲すれども) 恨無知音賞(知音の賞する 無きを恨む) 感此懐故人(これに感じて 故人を懐い) 中宵労夢想(中宵 夢想を労す) 最初に気になったのは不思議な形です。五聯だから律詩じゃない。しかもどう見ても押韻が仄韻(平水韻で上声二十二「養」韻)…って分かる方が少ないやな。あと最初の句も仄音なのもあれって思う。 …マニアックな話はこのぐらいにして、分かりやすい話をしましょう。ぱっと見て分かるのが「対句すげぇ」ですよね。これはホントすごい。 対句って、学校では「同じ文法構造の句が隣り合って出てきたら対句ですよ」ぐらいの事を教わったと思うのだけど、「正反対の字や句を隣り合わせにしたらexcellent」「よく似た字や句ならgreat」「文法構造が同じなだけならpoor」みたいな評価基準が実はあります。 そこでこの詩について、まず出だしから。 山光忽西落 ◎○◎◎◎ 池月漸東上 山光ってのは山の端に沈む太陽、池月ってのは池に上る月ですね。見ての通りexcellent連発です。実に美しい。 次の聯は対句的にはたいしたことがないように思われます。 散髪乗夕涼 ○△◎△△ 開軒臥閑敞 散髪って髪を切ることではありません。昔の中国の男性は正式な場所では髪を伸ばして簪で止めており、それをほどいたという意味です。「国破れて山河あり」の春望でも、「渾べて簪に勝えざらんと欲す」とあったでしょう。ネクタイをほどいたというような感覚だと思えば大まかには間違ってない気がしています。 閑敞は広い部屋。「乗」と「臥」の対に◎付けてるのは、髪が風に揺られる「動」と自分が寝転がる「静」の対比を感じるので。 △が多いのでちょっとがっかり感はありますが、こういうのでも実は昔の有名な詩句や故事で関連づけられてたりすることがあるので、最終的な評価はちょっと僕には出来ませんが。それからマニアックな話をちょっとだけすると、「髪」と「夕」はどう見てもどちらも入声なので、ここで二四不同を犯しているのが明らかですね。やはり古詩のようです。他でも分かる人も居るかも知れませんが、とりあえず僕はここで気づいたので。 荷風送香気 ○○◎○○ 竹露滴清響 「荷」は中国詩で出てきたら8割ぐらいはハスの花の事です。「荷風」ならハスの花を通り抜けてきた風。これも素敵な対句ですね。「風」と「露」は微妙に遠そうですが、どちらも気象関係の字なので多分かなり高評価のはずです。 欲取鳴琴彈 ○◎◎◎◎ 恨無知音賞 起承転結でいう転がここに置かれています。構造的には起承承転結って感じですけど。 「知音」は親友の意味。実はレストランで読んだときにはこの語句を失念していて「あれ、対句じゃないし転句っぽくもない。ちょっと残念」とか思ってしまいちょっと激賞できなかったという大変な不覚を取りました…。知音という単語がそもそも、自分の弾いた琴の音を理解してくれる人=親友、という故事から生じた言葉なので、言ってしまえばこの聯はそのまんまな構想ではありますが、やっぱ良いですね。タイトルに出てくる「辛大」は辛家の長男という意味で、誰だか存じませんがきっと孟浩然の親友だったのでしょう。ちなみに前の聯の「清響」がこの聯の「琴」や「音」の字の伏線になってるっぽいのがまた良い。 「恨」は大変悲しいという事。現代語の恨みとは違います。長恨歌とか恨の文化とかも全部そっち。 読み下し文を「弾こうとして取ろうとして」と苦しい感じにしてしまっています。「鳴琴を取って弾ぜんと欲すれども」とやればスムーズなんですが、ちょっとこの対句を崩すような訓み方になってそれも好かないのです。 最後は別に対句ではありませんが、これも綺麗にまとめています。 全体的に爽やかな雰囲気があって、大変気に入りました。 …何人が最後まで付いてきたかなぁ?(いつものことだけど) 【試訳】 日はずいぶん前に落ち、それから大分経ってから月が上ってきた。 髪をほどいて夜風に揺れるに任せ、窓を開いて広い部屋に一人寝転がる。 ハスの花を通り抜けた風がさわやかな香りを届けてくれて、竹の葉に乗った露が落ちて清々しい音が響く。 風流を感じて琴を弾こうと思ったが、それを聞いてくれる友人がいないのが大変寂しい。 そこでふと、もう居ない友人を懐かしんで、真夜中にいろいろ思い返してしまった
by sotono_hito
| 2011-10-07 23:58
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