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2005年 12月 24日
古橋秀之と言えばデビュー作の「ブラックロッド」に始まるケイオス・ヘキサ三部作を思い浮かべる人が多いと思う。これはファンタジー系のアイテムとサイバーパンクを組み合わせた、非常に気合いの入った世界設定のSFモノであった。しかし本作品は表紙やタイトルのポップさからも分かるとおり、むしろ「タツモリ家の食卓」に(未読。なので多分)代表される軽い現代物に分類されよう。しかし、やはり根がSF者の筆者であるからだろう、端々にそういう物が見え隠れもする(50Gt級の爆弾ってものが水爆以上だなんてすぐに分かる高校生どれだけいるのかね)。
本作品は短編集である。表題作の「ある日、爆弾がおちてきて」ほか、「おおきくなあれ」「恋する死者の夜」「トトガミじゃ」「出席番号0番」「3時間目のまどか」「むかし、爆弾がおちてきて」が収められている。以下ネタバレを含むので未読だがいずれ読むつもりのある人は読まない方がよろしかろう。僕のように3歩歩けば忘れてしまう便利な脳の持ち主ならば読んでも支障あるまい。 「ある日、爆弾がおちてきて」 体に爆弾を抱えた娘にそっくりな自称最新型爆弾の娘の話。しかも爆弾を止めるために爆薬飲むって小道具も何気に効いている。何しろ全身が爆弾なので彼女の汗や涙も衝撃厳禁の危険物。ヒロインが死ぬ話。登場人物の名前は長島+広崎=広島+長崎。 (トリビア:ニトログリセリンが心臓病の症状を緩和するのは、分子中のニトロ基(wikipedia)から出来るNO(一酸化窒素)(wikipedia)が細胞外シグナルとして働いて心臓の血管が拡張されるため。舌下錠として投与すると急速に血中に取り込まれる) 「おおきくなあれ」 大女が精神だけ小さくなっていく話。ついでに背の小さい男がそれにぶんぶん振り回される話、と思ったら主人公が実はその時代まで逆行してたってオチが分かりにくくて5回は読み返した。ある種の夢オチ?どーでもいーが未成年者も読むであろうラノベで大女に「タカさん」なんて渾名を付けるのはどーかと思う。分からなければ"The ガッツ!"でぐぐれ。知らない方が幸せなことも世の中にはあるということを知るであろう。小道具は非常に利いてる。ヒロインは風邪引いただけ。 「トトガミじゃ」 たぶん一番好きな短編。天上天下の真夜の小さい方が出てきたと思ったら図書室の神様だったような話(ぇ)。お爺さんの小松先生が良いキャラ。星野さんはうぜぇ(ぉ)。でも小松先生もトトガミ様になったんだとしたら、初代もあの年格好で死んだ人なのかね。それって、ロマンチックね!(ぉ)。ヒロインは居なくなるけどまた出てくる話。 「出席番号0番」 毎日クラスの誰かに顕れる不思議な人格の話。あとメガネ。なにげに挿絵が東鳩2な制服で、おまけに火浦さん(小説が出ない人とは関係ないはず)は「ケバい委員長」に見えたけど後でリファレンスを参照するとかなり違ってた事が発覚したけど制服はやっぱり東鳩2っぽかった(なんじゃそりゃ)。ちなみに東鳩2はやったことないです。締めは良い。ヒロインが…消えた気がするけどどーなったか分からない話?登場人物の名前は曜日。 「3時間目のまどか」 教室の窓を通じて異次元通信しちゃう話。っつーか貴様これある種のタイムパラドクスじゃねーか!?どうでも良いけどヒロインのマー姉(まどかではなく)はこの本で一押し。昔なら高校生ぐらいの方が良かったのに、歳食ったなぁ。ヒロインが死ななかったことになる話。一連の話では一番卑怯だな(「卑怯」は今回のテーマです)。ヒロインの名前は窓か?林田京一は左右対称。 「むかし、爆弾がおちてきて」 広島の原爆の像が実は時間において行かれた実物の少女だったような話。時の棺桶というかショーケースみたいなギミックはケイオス・ヘキサ三部作(確かブラッドジャケット)でも使われていたな、ヘルシング教授の娘の体を保管する場所として。しかし主人公、最後に少女の元に飛び込んだは良いが、それからどうするんだろうね。まるで映画「卒業」のラストみたいだよ(ちなみに、見てない(ぉ))。しかしこれ、オチが「何物も500年もの時間による風化に耐えることは出来ず、あの筒の上から飛び込んだ物体は何一つ彼女に届くことは無かった」なーんて話になってたらやだね、ある意味スプラッタ。ヒロイン以外がみんな死んじゃった話。 「恋する死者の夜」 後回しつまり本題。これを読んだとき、ある一定以上の年齢の男性なら誰しもあるギャルゲとそのキャラを思い浮かべる義務がある……もとい、そのうちエロゲーに手を出していた者なら大概が思い浮かべるであろうタイトルとヒロインがある。同級生2の杉本桜子である。 桜子は病弱で、入院している病院の窓からいつも外を眺めて過ごすばかり。そこへある日、主人公が窓のそばにあった木に登って挨拶した事がきっかけとなり、彼女の数少ない話し相手となる。外に連れ出せとせがまれたりもする。 外見はやや幼いが大きな目が特徴的でかわいらしく、長い髪を束ねて片方にまとめ、肩にはショールを羽織っている。年齢は高校三年生の頃と推測される(一応ソフ倫規定で高校生は駄目なので○○学園などとぼやかして表現されるのが常)。 彼女と話せる時間は限られていて短い。その体が許容するのは日中の数時間のみである。また親密になったころ月夜に病院の中庭での逢瀬というイベントもある。 それから程なく彼女は突然死ぬ。実際には勘違いなのだが(主人公が木から落ちるのはこの時)(これは多くのプレイヤー達にも大変な衝撃を与えたイベントで、僕は桜子ショックなどと呼んでいた)。そして突然生き返る。実際には死んでたわけではないのだが。またこれで「終わりを汚した」として一気にアンチ桜子に走った人も多い。そのときの服装はトレーナーと羽織る上着、帽子そして(真冬で病弱なはずなのに)ミニスカートであった。後はまあエロゲのごにょごにょ。 ちなみに、彼女と出会ってから"死"ぬまではおよそ十日前後であり、期間としてはけっこうロミオとジュリエットを意識させる物だったりする。エロゲにおける病弱少女物の元祖的存在だが、この辺について無意味に深い解説は帝国療養院を参照のこと。 上記の説明文のうち、強調部分は本作のモチーフやヒロインのナギに共通する。いやもうお前何も考えてないだろと作者に問いただしたくなるシンクロ率である。さすがに箇条書きマジックのそしりも免れるであろう(上記のうちいくつかはこじつけであるとしても)。 しかし、僕はこれを以て作者:古橋秀之をパクリだと断罪したいのでは断じてない。もし作者が桜子ショックを経験していたのであれば、この作品はあのシナリオに対する自分なりの解決・解釈・解答であろうと想像できるからだ。実際、あのイベントは多くのプレイヤーにとって、それが必要になるほど深刻なものだったのだ真面目な話。桜子への思い入れが最大まで高まったところで突然の死亡に、食事がのどを通らなくなったり泣きまくったり前のデータにさかのぼって町中歩いて「生き残りフラグ」を探したり学校の授業が手に付かなくなったりしたりした人が全国に多発したらしい。今のようなネット環境以前の話だから、あるいはパソ通なんて人もいただろうが口コミが主力の時代の事である、その攻略ルートを知るまでの苦悩の程はいかばかりであったろうか。そして突然復活して、嬉しいはずなのにどこか引っかかるものを感じないわけでもない、人によっては引っかかりまくる、という複雑な気持ち。その違和感を一言で要約すれば「卑怯」だ。その筋書きに、ライターに、そして桜子自身に。このような複雑な心境を癒すために創作に向かった人というのはかなり居るのではないかと想像される。 もちろんここまででは、単なるパクリとか偶然の一致という可能性も否定できない。というかどこまで行っても結局の所は作者本人だけが知っているのだけれど、僕がこれを…敢えて大げさに言えば桜子への追悼文…であると感じたのは、ヒロインであるナギの扱いからだ。この話では、ヒロインは死んでいるが同時に永遠に生き続ける。死んでよみがえった桜子のある意味で正反対に置かれている。世界がループしている=ゲームなんてガンパレ世界観はさておくとしても、この作品は"綺麗に終わ"らなかった世界と物語に対する皮肉、あるいは憎悪さえ感じさせる結末だろう。その意味でこの作品は表題作の「ある日、爆弾がおちてきて」の裏側とも言える。あるいは「3時間目のまどか」も、「生きてて良かったね」的なハッピーエンドが妙に卑怯で軽薄に映らなかっただろうか。こうした事から僕がこの作品から受けた印象は、まさに桜子シナリオに対して感じたであろう違和感への作者の結末であり解答だという事。まさか実際にこれを書くまで引きずっていたわけでも無かろうが(リリースから既に10年が経過しているわけだし)、その原型は桜子シナリオから、ただのモチーフのパクリではなくもっと深いところから生まれたのではないかと僕は想像するのである。 こちらのエントリはSF系の解説が書いてあったりして分かりやすかったのでついでにちょっとご紹介。
by sotono_hito
| 2005-12-24 00:57
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