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2006年 09月 11日
知れば知るほど面白いもやしもん。しかし作者が生物学を専攻していたわけではないので、たまに間違った事が書かれていることもあります。
それが悪いと言うことでも、だからもやしもんは駄作だとも言うつもりは全くなくて、単に折角なので蘊蓄漫画に便乗してさらに蘊蓄を深めようというわけで。 32話のプラスミドに関する記述は、欄外の自信なさそうなトークのとおりかなり間違っています。 まず、プラスミドもゲノム同様に二重螺旋の二本鎖DNAです。というか生物に一本鎖DNAってのはあんまりない。ゲノムというのはある生物種を特徴付けるような1そろえの遺伝情報の事。DNAの複製や修復のために二本鎖DNAという形は割と都合が良いらしい。 そして、大腸菌のような原核生物のゲノムは実はプラスミドと同様に環状です。プラスミドとはサイズが段違いですが(大腸菌ゲノムは一般的に実験で使われるプラスミドの約500倍)。ゲノムというとヒトの23対46本のX字型のあれを思い浮かべる人が多いと思うけど、あれは染色体といってヒストンというタンパクにDNAが巻き付いたもの。このDNAは線状で、その両端がかの有名なテロメア。 現代社会において細菌類にとってプラスミドというDNAがゲノムと別に存在していることでもたらされる最大の利益は何かというと、薬剤耐性です。薬剤耐性の遺伝子は多くの場合プラスミドに乗っています。そしてプラスミドDNAはゲノムDNAにくらべると遺伝子の水平伝搬、つまり異種間の遺伝情報交流に便利な形態ですから、偶然に獲得された薬剤耐性遺伝子が種を超えて広がる可能性が高まるのです。他に有名なのはO-157のベロ毒素。実はこれ、ある種の赤痢菌の持つ志賀毒素と同じ物なんだそうで、明らかに水平伝搬があったんだとか。 これは完全な誤りとは言えませんが、「菌」と一言で扱われている中身がめちゃくちゃ広いのが気になります。たとえばウィルスは遺伝情報と外壁と感染用の仕組みだけで殆ど成り立っているもので、自分自身では生物としての活動を行わない言わば非生物ですし、その大きさは0.1μm程度です。一方の大腸菌は原核生物、酵母はかなり高等な真核生物で、大きさも3μm(大腸菌は長さ、酵母は直径)ほどあります。この辺が区別無く描かれているのはちょっと気にならなくもない、かな。大腸菌と酵母が同じ大きさで仲良く喋っている図というのはちょっと笑える。 それから7話で教授がO-157を光学顕微鏡で簡単に同定していたけど、大腸菌だという以上の事が分かるかははなはだ疑問。普通は抗原で見分けるらしい。ELISAでもやるのかな?多分判定に一晩ぐらいかかる。 第17話で大腸菌が「お前も昔人間に捕まってたって言ってなかったか?」などと話していますが、これは本当だとするとちょっと(建前上)やばい。 実験室で大腸菌を何のために飼うかというと、欲しいDNA断片をプラスミドに突っ込んで増産させたり欲しいタンパク質をコードする遺伝子を発現ベクター(特殊なプラスミド)に突っ込んで大量発現させたりするためなんだけど、場合によっては性質のよく分かってないものや明らかに有害なものを生産させる場合もあるので、こういうのが環境中に放出されると困ることから、こいつらには生物学的封じ込めという仕掛けがされています。 生物学的封じ込めとは、大腸菌株には一般環境で生存しにくい奴を選び、プラスミドには他の種や同じ大腸菌でも他の株だとなかなか増えないような物を選ぶという事を指します。つまり、研究室の一角とはいえ(ちなみに研究室には物理的封じ込めという制限も掛かっています。一応ね。)こんなところで世間話をされてると建前上はよろしくない(笑)。 そうそう、前の頻出属名で、よりによってとても重要な2つを書き漏らしていたのでここに追加しておきます。 Saccharomyces:出芽酵母です。サッカロマイセスと読むことが多い。糖うめー。単細胞だがかなり高等な真核生物。 Escherichia:大腸菌。名前に反して実はヒト腸内常在細菌の0.01%以下に過ぎない。水質検査で「大腸菌群数」と言う時は大腸菌以外の種もカウントされる。遺伝学や分子生物学の分野では大活躍。あとインシュリン生産なんかにもよく使われる(インシュリン遺伝子を発現ベクターにぶち込んで以下略)。
by sotono_hito
| 2006-09-11 16:37
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